蛇紋石は石英や長石、雲母など同様造岩鉱物のひとつで、その多くは変質や風化した火成岩中に見つかります。ときには赤や黄色、白色などもありますが緑色が一般的で、岩石のうち緑色のものは蛇紋岩が含まれていることが多いようです。蛇紋石は化学成分は同じで構造の異なる下記のような変種があり、多形態グループを形成します。蛇紋石はそれらのグループ名です。
アンチゴライト: Antigorite (Mg,Fe)3Si2O5(OH)4 単斜晶系 <板温石>
クリノクリソタイル: Clinochrysotile Mg3Si2O5(OH)4 単斜晶系 <温石綿> (クリソタイル)
オルソクリソタイル: Orthochrysotile Mg3Si2O5(OH)4 斜方晶系 (クリソタイル)
パラクリソタイル: Parachrysotile Mg3Si2O5(OH)4 斜方晶系 (クリソタイル)
リザルダイト: Lizardite Mg3Si2O5(OH)4 三斜晶系
バスタイト Bastite Mg3Si2O5(OH)4 単斜晶系 <絹布石>
ピクロライト Picrolite (Mg,Fe)3Si2O5(OH)4 単斜晶系 <硬蛇紋石> (アンチゴライト)
マーモライト Marmolite (Mg,Fe)3Si2O5(OH) 単斜晶系
これらは見た目では判別不能ですがアンチゴライトやリザルダイトは層状雲母のような陰微晶質になり、クリソタイルは石綿状になります。古くから彫刻などに利用されてきました。石綿(アスベスト)と呼ばれるものには蛇紋石のクリソタイル(温石綿)、角閃石のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、直閃石(アンソフィライト)、透閃石(トレモライト)、緑閃石(アクチノライト)などがありますが、産業的な利用においてはチリ状になりやすく強い発がん性のある青石綿、茶石綿は以前より使用禁止になりました。また、比較的発がん性の低いクリソタイルも代替品ができたため最近になり使用禁止になりました。とは言うもののファイバーな鉱物は大変魅力的な標本でありますのでケースなどに入れておいたほうがよいでしょう。
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